毎年秋の恒例となっている「THE 世界大学ランキング」。2019版が先日発表され、今年も2年連続でイギリスのオックスフォード大学が1位となりました。毎年注目されているこのランキングですが、実は日本の大学だけをランキングした日本版も存在しているんです。(「QS世界大学ランキング」とは異なります。)
今回はその「THE 世界大学ランキング」の世界版と日本版の評価基準の違いを比較してみましょう。
THE 世界大学ランキングの世界版と日本版では評価基準が違う?
この「THE 世界大学ランキング」はイギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーションという高等教育専門誌が行っています。
日本版ではこのタイムズ・ハイアー・エデュケーションと日本企業のベネッセグループが協力しているので、客観的かつ日本の教育事情に即した内容となっています。
そのため、評価基準も世界版と日本版では異なります。
世界版は「研究力」、日本版は「教育力」に注目!
それぞれの評価基準を見てみましょう。
まず、世界版は、
・教育(研究者による評価、教員あたりの学部学生数、学士授与数数当たり博士授与数比率、教員当たり博士授与数、教員当たり収入)
・論文引用
・研究(研究者による評価、教員当たり研究収入、教員当たり論文数、研究収入中の公的資金の割合)
・国際(外国人教員比率、外国人学生比率)
・産学連携(教員当たり産学連携収入)
の5分野13項目で判断されます。
それぞれの配分は
教育が30%、
論文引用が32.5%、
研究30%、
国際5%、
産学連携2.5%
となっています。
論文引用はその研究がどれだけ影響力を持っているかということを表しているので、これも研究力に関連する項目です。
そう考えると世界版では論文引用の32.5%と研究の30%の計62.5%と、非常に大きな数字が研究力に当てられていることがわかります。それだけ研究力を重視しているということですね。
では、日本の評価基準を見てみましょう。
・教育リソース(学生一人あたりの資金、学生一人あたりの教員比率、教員一人あたりの論文数、大学合格者の学力、教員一人あたりの競争的資金獲得数)
・教育充実度(高校教員の評判調査:グローバル人材育成の重視、高校教員の評判調査:入学後の能力伸長)
・教育成果(企業人事の評判調査、研究者の評判調査)
・国際性(外国人学生比率、外国人教員比率、日本人学生の留学比率、外国語で行われている講座の比率)
この4分野13項目によって評価されます。同じ13項目という数でも随分と内容が異なっているようですね。日本版では研究力を問う項目は皆無です。
配分は
教育リソースが34%、
教育充実度が26%、
教育成果が20%、
国際性が20%
と、80%が教育関連の項目となっていることがわかります。
まとめ
世界版と日本版の評価基準の違いを比較してみると、それぞれの大学についての捉え方の違いが見えてきます。
世界基準では大学は研究に重きを置き、学生が研究によって成果を上げることを目的として学習しているように思えます。
日本においてはいかに学生を教育する力を大学が持っているかという点を重視していることが明らかなのを考えれば、そこには学生は不在で、見えてくるのはあくまでも受け身の存在としての学生の姿です。
日本では大学に入学するのはひどく難しいですが、一旦入学してしまえば比較的楽に卒業できるといわれます。大学に入学してからは受験時のような勉強をすることはないとも。もちろんすべての大学、学生がそうであるわけではありません。
海外では、入学するのは日本よりも楽ですが卒業するのが難しいといわれています。学生はかなり熱心に勉強しなければ卒業できず、高い学力を保持し続けているようです。
こうした違いが評価基準の差として現れているのでしょう。しかし、先日発表された「THE 世界大学ランキング 2019」では、日本の最高峰である東京大学でさえ42位という結果でした。
欧米の有名大学とは大きな差をつけられている感が否めません。将来的には、評価基準にわざわざ日本版などを設定しなくてもいいような環境に変わっていかないと世界的に後れを取ってしまうのではないか、という危機感を感じてしまいます。
ただ一方で、「THE 世界大学ランキング」のランキング方式にも疑問が残ります。大学の資金力を重要視している感が否めませんし、論文の引用方式も英語圏の論文の方が有利な感じもします。
ちなみに「QS世界大学ランキング」は「THE 世界大学ランキング」の評価に対する疑問から作られたランキングなのでここと比べてみるのも興味深いと思います。
■参考