1997年宮崎駿監督映画『もののけ姫』。20年以上たってもその魅力は色あせることはありません。見事なタタラ場もその1つですね。
タタラと聞けば島根(出雲)が思い浮かびますが、実は舞台となった場所は島根だけではありません。
ここではタタラ場のモデルとなった場所について見ていきます。
タタラ場の舞台は島根!
日本古来より製鉄の歴史のある山陰・山陽地方。
中でも出雲(島根県)や広島は製鉄産業が盛んだったようで、今でもその名残が見られます。
余談ですが、タタラ製鉄における公開施設がやはり島根県に集中していますし、広島県は近代以降、広島針の産地となりそれがモルテン、ミカサなど競技用ボールのメーカーの誕生へと繋がっています。
砂鉄を原料とする『もののけ姫』のタタラ場。
出雲の国では良質の砂鉄が取れており、『もののけ姫』のモデルともなっています。
原材料である良質の砂鉄が取れ、製鉄に欠かせない木炭生産に必要な豊かな森林資源と温暖多湿の土地柄がその背景にあります。
ちなみに山陽側の製鉄は鉄鉱石が使われていたようです。
タタラというのはそもそも
製鉄のさいに火力を強めるために使う鞴(ふいご)
の事を言います。
『もののけ姫』で女たちが風を炉に送るシーンがありますが、あの踏んでいるのが蹈鞴(タタラ)と呼ばれる足踏み式の大きな鞴になります。
その後、製鉄法やその建物を含む場所のことをタタラというようになったというのがざっくりとした流れになります。
タタラ製鉄は日本古代から近世にかけて発展してきた製鉄法。
近代まで国内の鉄を賄っていたわけですが、明治30年代ごろからの安価な輸入鋼材(関税自主権を持たないため)と西洋の生産性の高い製鉄法が導入されるとともに衰退の一途をたどります。
昭和のはじめから第2次世界大戦にかけて若干の盛り返しがありますが、戦後はほとんど見られなくなります。
タタラ製鉄の鉄は主に日本刀に使われており、タタラ製鉄の発展は日本刀の発展とも言えるほど。
日本刀の原料となる良質の玉鋼は洋式製鉄では作ることができません。このほか文化財の修復にもこの玉鋼でないとだめみたいです。
戦後、日本鉄鋼協会が研究目的でタタラ製鉄の復元を行ったり、日本美術刀剣保存協会が日本刀鍛錬技術の継承目的で「日刀保たたら」を運営しています。
タタラ製鉄の観光情報が島根県観光連盟公式サイトにまとめられています↓
内部は小樽の鰊御殿
『もののけ姫』のタタラ場の製鉄作業場はモデルが出雲ということは結構知られているんですが、実は出雲だけがモデルではありません。
タタラ場の建物内部は小樽の鰊御殿がモデルにされています。(映画『もののけ姫』パンフレット参考)
鰊御殿(にしんごてん)は、第二次世界大戦前に、北海道の日本海側に建てられた、網元の居宅兼漁業施設(番屋)の俗称
小樽の鰊御殿といってもいくつかあって、
・日和山灯台とセットでの風景美が格別な小樽市鰊御殿(旧 田中福松邸)
・日本唯一の宿泊可能な鰊御殿、銀鱗荘(ぎんりんそう、旧 猪俣安之丞邸)
・総工費31万(当時の新宿のデパート総工費50万)の豪邸、旧 青山政吉邸(小樽貴賓館、にしん御殿、旧青山別邸)
・旧 白鳥家番屋(群来陣)
などがあります。
『もののけ姫』のタタラ場内部も気をつけて見てみると楽しいですよ。
まとめ
・『もののけ姫』のタタラ場は出雲国(島根県)のタタラ製鉄がモデル
・タタラ場の居住空間等内部は小樽の鰊御殿がモデル
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