天皇陛下の退位後の制度設計に国民の関心が集まっており、2017年4月現在、退位後の呼称には「上皇」とする方向で進められています。天皇との違いや大河ドラマに出てくる「法皇」との違い、歴代上皇ついて簡単に見ていきたいと思います。
上皇(読み方「ジョウコウ」)とは?天皇や法皇との違い
在位中の天皇の呼称を「今上天皇(読み方はキンジョウテンノウ)」といいます。「聖上(セイジョウ)」とも呼ばれますがあまり馴染みはないかもしれません。一般的に使われているのが敬称をつけた「天皇陛下」ですね。
時代を遡ると「帝(ミカド)」「天子様(テンシサマ)」とも呼ばれていてこちらの方が時代劇や小説等で馴染みがあります。
また「天皇(スメラミコト)」ととも呼ばれていました。
漫画『持統天皇物語 天上の虹』など里中満智子さんの作品の愛読者の方などは「スメラミコト」の方がしっくりくるかもしれません。
余談ですが天智天皇から文武天皇あたりの歴史の成績をあげたい方は『持統天皇物語 天上の虹』を読むと人物相関図がわかるのでオススメです。このほか『長屋王残照記』『女帝の手記―孝謙・称徳天皇物語』もあります。
古代の日本は祭政一致で、天皇は豊穣への祈りや祝いを神に捧げる立場、つまり稲を中心とした作物が育ち、自然の恵みを受け、人々が安心して暮らせる、そういったことを祈る特別な立場であると同時に、政(マツリゴト)を行う立場でした。
時代の変遷と共に権力のあった時代もあればそうでなかった時代もありますし、政権争いをしていた時代もあります。
戦後、天皇は日本の象徴ということになっていますが、何を持って<象徴>とするのか?考えされられるなと思います。
国民のために祈り、世界の平和を祈り、被災地訪問等など国民に寄り添うようにして活動してこられた天皇陛下のお姿というのはやはり印象的です。
「上皇」は「太上天皇」の略から来ています。天皇が後継者に皇位を譲ったあとに贈られる尊号のことを言います。または「院」とも言います。
歴史上では「法皇」という地位も存在しこちらは「出家した上皇」を指す称号なので実際の身分も権力も上皇のままです。後白河法皇とかが有名ですね。
日本史上の歴代上皇を一覧にしてみた
歴代上皇を一覧にしました。何代目の天皇か、上皇即位年も合わせて見ていきます。
皇極(前天皇)(第35代天皇、第37代斉明天皇)
※皇極天皇の時代は「天皇」「太上天皇」の称号がなく、次に即位した弟の第36代孝徳天皇より皇祖母尊の称号を受ける
持統上皇(第41代天皇)697年【史上初の太上天皇(上皇)】
元明上皇(第43代天皇)715年
元正上皇(第44代天皇)724年
聖武上皇(第45代天皇)749年
孝謙上皇(第46代天皇・第48代称徳天皇)758年
光仁上皇(第49代天皇)781年
平城上皇(第51代天皇)809年
嵯峨上皇(第52代天皇)823年
淳和上皇(第53代天皇)833年
清和上皇(第56代天皇)876年
陽成上皇(第57代天皇)884年
宇多上皇(第59代天皇)897年
朱雀上皇(第61代天皇)946年
冷泉上皇(第63代天皇)969年
円融上皇(第64代天皇)984年
花山上皇(第65代天皇)987年
一条上皇(第66代天皇)1011年
三条上皇(第67代天皇)1016年
後朱雀上皇(第69代天皇)1045年
後三条上皇(第71代天皇)1073年
白河上皇(第72代天皇)1087年
鳥羽上皇(第74代天皇)1123年
崇徳上皇(第75代天皇)1141年
後白河上皇(第77代天皇)1158年
二条上皇(第78代天皇)1165年
六条上皇(第79代天皇)1168年
高倉上皇(第80代天皇)1180年
後鳥羽上皇(第82代天皇)1198年
土御門上皇(第83代天皇)1210年
順徳上皇(第84代天皇)1221年
後高倉院(守貞親王)1221年
後堀河上皇(第86代天皇)1232年
後嵯峨上皇(第88代天皇)1246年
後深草上皇(第89代天皇)1260年
亀山上皇(第90代天皇)1274年
後宇多上皇(第91代天皇)1287年
伏見上皇(第92代天皇)1298年
後伏見上皇(第93代天皇)1301年
花園上皇(第95代天皇)1318年
後醍醐上皇(第96代天皇)1336年
長慶上皇(第98代天皇)1383年
後亀山上皇(第99代天皇)1392年
光厳上皇(北朝第1代天皇)1334年
光明上皇(北朝第2代天皇)1348年
崇光上皇(北朝第3代天皇)1351年
後光厳上皇(北朝第4代天皇)1371年
後円融上皇(北朝第5代天皇)1382年
後小松上皇(第100代天皇)1412年
後崇光院 1448年
後花園上皇(第102代天皇)1464年
正親町上皇(第106代天皇)1586年
陽光院 1558年以前
後陽成上皇(第107代天皇)1611年
後水尾上皇(第108代天皇)1629年
明正上皇(第109代天皇)1643年
後西上皇(第111代天皇)1663年
霊元上皇(第112代天皇)1687年
東山上皇(第113代天皇)1709年
中御門上皇(第114代天皇)1735年
桜町上皇(第115代天皇)1747年
後桜町上皇(第117代天皇)1771年
光格上皇(第119代天皇)1817年
慶光院 1884年
参照:
先述した持統天皇も後継の都合上、上皇となっています。このあたりも『持統天皇物語 天上の虹』を読むとわかりやすいので参考になりますよ。
大河ドラマ『平清盛』の崇徳上皇や後白河上皇は有名ですよね。1221年の承久の乱で失敗し隠岐に流されたのが後鳥羽上皇です。
後白河上皇(後白河法皇)はおそらく日本のアニメーションの源流とされる『伴大納言絵詞』など連続式絵巻のプロデュースも行っていたとも言われていますし、「今様狂い」とも称される遊び人、面白いもの好きとしてのイメージがありますが、一方で鎌倉幕府と折り合いをつけていて長く政治の実権を握っていて非常に興味深い人物です。
慶光院の場合、死後に追号されているので実質、光格上皇が2017年4月現段階で最後の上皇となります。
もし今回、天皇陛下の退位後の呼称が上皇になられると約200年ぶりの上皇誕生ということになります。
まとめ
・天皇を退位し没するまでの地位が上皇。法皇は出家した上皇の事
・上皇として有名なのは崇徳上皇、後白河上皇、後鳥羽上皇など
・史上は初の上皇は持統天皇(皇極天皇の退位時は称号がない)
・2017年4月の段階で最後の上皇は光格上皇
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